第25章 splinter
ガランとし、静かになってしまった教室。
4つある机のうち2つはガラ空き。
あの騒がしい日々は、
一体なんだったんだろうか。
全て幻だったのか?
ただの妄想だったのか?
今ではそんな気さえしてくる。
結局、硝子と2人きりでの卒業となってしまった。
五条は、満開の桜の木の下で、
散っていく花弁を見つめていた。
蝶のように、空中をひらひらと舞っているピンク色を見て、小さく呟く。
「なんで今年に限って満開なんだよ…」
視線を落とせば、その花弁は絨毯を作っていた。
自分の靴に何枚か落ち、それをジッと見つめる。
風が吹き抜け、それは絨毯の一部と化した。
"チェリーよりさくらんぼって曲のが私は好きだな。てか、来年はさ、桜を皆で見たいね。卒業式の日に、桜の木の下で、皆で写真撮りたいな。"
そう言っていたのに…。
レイ…ごめんな。
俺って結局、なんにもしてやれなかった。
あれだけ悲し涙は流させないって誓っていたのに、
無理だった…
そもそも、"空になる"ことさえもできなかった。
最強のくせに、
命も救えなかった。
どころか、
遺体すら残せなかった。
結局、なんにもできやしなかったんだ。
傑はきっと、
レイが死んだことに気がついているだろう。
"レイを頼むよ"
無理だったよ、俺。
怒ってるかな。
怒ってるよな。
お前怒るとすげーこえーから、嫌だな。