• テキストサイズ

walking proud~呪術廻戦~R18~

第25章 splinter


"卒業式の日に桜の木の下で、それ歌ってよ"

"え、みんなの前では恥ずかしいよ"

"いや俺の前でだけでいいよ"

"はぁ?"



ケラケラと笑っていた彼女のことが、鮮明に蘇る。

それからくま野郎のことも…


「…歌…聴きたかったな……」






これは…

拷問だ。呪いだ。


そう思った。





「はー…なーんか…卒業っつー実感がねーなー…」

「そうだね…」

硝子が桜の絨毯を靴で掘りながら言った。

「どーせ俺らって卒業しても、やること変わんねーだろ?だからかなー、なんか、テンション上がるどころか下がるわ〜。しかも、みんな離れ離れ〜とか、忘れないよぉ〜とか、そーゆーフツーの学園ドラマみたいな青春ないからなー。第2ボタン下さいとか言われたかったわ〜」

「ねぇ、五条。」

ペラペラと喋りっぱなしの五条に、硝子は声をかける。
木に寄りかかって上を見上げていた五条は、サングラス越しにこちらを見た。
そのレンズには、ひらひらと動いているものがたくさん映っている。


「写メ、撮る?…桜綺麗だし。
写真好きっしょ、あんた。」


五条は、少し沈黙し、
木に身を預けたままずるりと座った。

そして静かな声を出す。


「あー…いいよ別に。」

「…いーのー?
私が付き合ってやることなんてそうないよ?」

「うん。残すことばっかしてるとさ、"今" が見えなくなるだろ。今に無くて過去にあったものを探して、見て、感じて、で…幻覚を作りあげようとする…」

楽しかった日々を思い出して
脆くなるんだ。
人間は弱いから。
あの頃に戻りたいとか感じてね。


「足止めになるようなものは避けたいんだ…
進みたいんだ、前へ…」


五条は桜の絨毯をすくった。

その手首には、ミサンガがしてある。
硝子は無意識に自分のミサンガを触った。


五条の手のひらからハラハラと花弁が落ち、
また絨毯に加わった。



「 "僕" はもう、道を決めたんだ。
そこを通る絨毯も、自分で敷いていく。
ルビーみたいに真っ赤な絨毯をね…

僕には………夢があるんだ。」





そこに落ちていく花弁はまるで雨のように

いつまでも降り注いでいた。



.
/ 1492ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp