第24章 calamity
「君たちは私の髪を弄るのが好きだね…」
長い髪を楽しそうにクシで梳かしたり、結んだりしていつも遊んでくるこの2人は…
やっていることもその空気もあの子と同じで、また思い出してしまう。
「うん!夏油様のこともこの長い髪の毛も!だぁいすき〜!」
「ちょっと菜々子!私の方が夏油様のこと大好きなんだから〜」
「私の方が美々子より夏油様のこと愛してるもんっ!」
「負けないもん!私のが愛してる!」
2人のやり取りに目を丸くする。
「こら待った待った。喧嘩をしない。
というか…随分と大人びた言葉を使うようになったな…」
「好きよりもっと好きって、愛してるでしょ?!」
「愛してるが1番上でしょ?!」
懇願するようなキラキラの子供の目から、
苦笑い気味に目を背ける。
「それは…どうだろうね…
でも…おいそれと他人に使うべきではないよ」
「私たち夏油様だけだよ?!
大好きで、愛してるんだよ?!」
必死なその表情にフフっと笑う。
まだまだ純粋無垢で何も知らないのだろう。
「好きも愛してるも…厄介な言葉なのさ。
愛ほど歪んだ呪いはないよ…」
だから私は言わなかったんだ。
いくら言いたくても、
それを言われた者は永遠に呪われる。
だから私は呪われている。
もう随分と前から…
でも…
私が呪いを受ける側でよかった。
1番それを言いたい人には
言わないことが1番の救いになる。
ポカンとした表情で口を開けている2人の頭を撫でる。
「でもありがとう。
私も大好きだよ、2人ともね。」
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