第23章 cruelty
そうだよ、俺は今…
たった1人の親友に攻撃を向けている。
でもお前は
たった1人の大切な恋人にそれを向けていたよな?
凄い形相の五条と、氷のように冷たい夏油の視線が交わっている。
レイは二人の間で、ギュッと目を瞑って俯いた。
もう、なにがなんだかわからない。
見ていられないし、
何も視界に入れたくない。
そのまま数秒の沈黙が流れたあと、夏油はゆっくりと踵を返して歩き始めた。
ハッとなったレイが追いかけようとした瞬間、五条に強く腕を掴まれる。
「っ!やだ離して!!」
「ダメだ行くな!!」
夏油の背中はどんどん小さくなっていく。
その背に手を伸ばす。
あ……あ……
まっ…て…
あぁ……
すぐ…る……
あ………ぁ……
伸ばした手の先で、
彼の背はどんどん遠ざかっていく
「やだ…や…いや…行かないで……
離してーー!!」
「ダメだ!!」
五条に後ろから強く抱き締められる。
その腕の中で、視線の先で小さくなっていく背中を見つめ続けた。
「うわぁぁぁああんあぁああああああああぁぁぁ」
「… レイ!」
五条はレイを振り向かせ、ギュッと抱き包んだ。
「うわぁぁぁあぁぁああん!!!」
腕の中でひたすら大きく泣き叫んでいる。
五条は彼女の後頭部を自分の胸に押し付け、
背中をさすった。
奥歯を噛み締め、目を瞑りながら、
ただただその叫びを聞いていた。
その声が枯れるまで…。