第23章 cruelty
傑が短くため息を吐いたのが分かった。
そして、耳元に小さく届いた声。
「…好きだ」
目からまた、とめどなく涙が溢れた。
「な…んで……」
なんでそんなことを今言うの…
ズルいよ…
"これを言うのは最初で最後だからな"
そう最初に言ったっきり、
決して口には出さなかった言葉。
それは私にとって、
呪いになる。
「……いつか…君を迎えに行っても…
いいかな…?」
なにそれ…
どういうことなの?
何も言えなくなっている私の耳に、
傑はまた優しく囁いた。
「言い方を間違えたな…
君をさらいに行くよ…」
「え……」
その腕はギュッと私を抱きしめ、またすぐに脱力し、押し剥がそうとしてきた。
それでも私は離れまいとしがみつく。
片時も離れていたくない。
迎えとか意味ない。
ずっと一緒にいたい。
少しも離れたくない。
傑が深く深呼吸し、長い息が私の髪を揺らしたのが分かった。
「… レイ!!離れろ!!」
後ろで突然 悟の大声が聞こえて、反射的に腕を緩めた瞬間、スっと傑の体が離れた。
傑は手に呪力を溜めていた。
術式で私を気絶させようとしたのか…
それとも…
いずれにせよ、ショックでまた涙が流れた。
「誰にそれを向けてんだ傑!!!」
「…君こそ誰に向けているんだい悟。」
恐る恐る振り返ると、悟が傑に術式を構えていた。