第3章 comrade
「…買い物は終わったの?」
ようやく発せた言葉はそんなこと。
「ああ。やっぱ静岡と言ったらうなぎパイだよねぇ〜それからカステラと羊羹と、そうそうバームクーヘンが有名なんだよ!治一郎クーヘン!」
「もう、どんだけ甘党なの…てかそれ全部新幹線の中で食べるわけじゃないよね?」
「なんだよ一緒に食うだろ?」
握られている手に力が入るのがわかり、今更気がつく。
手…手を…繋いでるなんておかしい!!
「お待たせ〜!ごめんね遅くなっちゃってぇ〜!夜蛾先生ご所望のモナカがなかなか見当たらなくてさぁ〜」
硝子の声が聞こえてきた瞬間、五条がパッと手を離し、何事も無かったかのようにサングラスをズラした。
硝子と夏油の持っている紙袋を見ながら目を細める。
「ほう。俺に負けず劣らずの量だな」
「いや、これあんたみたいに1人分じゃないから」
そのツッコミを無視するかのように五条はいたずらっぽい視線を夏油に投げかけた。
「傑がちゃんと見ていないから、レイが襲われる寸前だったんだぞ〜」
「っ!なに?」
たちまち目を見開いて凄い形相になる夏油を見ながら慌ててレイが首を振る。
「違う違う!大袈裟なんだから!ただ話しかけられただけだよ」
「甘いなレイは。あれは立派なナンパ。
"1歩間違えれば犯罪"だ」
「どこへ行ったそいつらは!」
突然の夏油の気迫にビクッと口篭る。
代わりに何食わぬ顔で五条が口を開いた。
「もー俺が追っ払っちまったよ。
もうちっと警戒心を持たないとなぁ傑。」
「…そうか。悪かったなレイ。大丈夫か?」
「っえ!大丈夫大丈夫!ていうかホントに大したことないんだって!」
眉を下げてため息をつく夏油になんだかとてつもなく申し訳なくなる。
警戒心を持たなきゃいけないのは傑ではなく私だ。