第21章 residual ■
俯いたままの彼の表情は見えないが、レイは満面の笑みで続けた。
「あ!ていうか私たち3年は来年の春に卒業ってことは、ギリギリ桜は見られるかぁ…今年は忙しくてみんなで花見すらできなかったけど、来年なら見られるよね。さすがに卒業式の日なら!…七海くんお見送りよろしくね!」
「………はい。」
「あ!卒業してもたまにクマと遊びに来るね?そしたら一緒に甘いものでも食べに行かない?クマのせいでいいお店たくさん知っちゃって!全然回りきれてないんだよね〜それか、七海くんオススメのお店でもいいよ?七海くんグルメって聞いたし!」
「………後者でお願いします」
「うん!分かった!楽しみができたなぁ〜」
目をこすってからようやく顔を上げると、1寸の曇りもない無垢そのものの満面の笑みのレイがいた。
「生きてるってことが、いっちばん価値のあることだから、今あるものを大切にしなくちゃって思うんだ。
人は、生まれた以上はいつか死ぬことも決まっているから。
だからこそ、どんなふうに生きて行くかがとても大切なことでしょ!
何をして、何を残すのか。
毎日をそういった気持ちで生きなくちゃね!
せっかくだから、いっぱい楽しまなくちゃ!」
そこに、七海は灰原の面影を見た。
同時になぜ彼女が周りに愛されているのかを理解した。
なんの穢れもなく、呪った人間がいたとしても確実に跳ね返してしまいそうなほどの純粋な存在。
人に、その時欲しくてやまない言葉を無意識に与えてくれる、そんな存在だからだと。