第21章 residual ■
レイが教室に戻ると、そこには五条がなにかを口ずさみながら、1人で任務報告書を書いているようだった。
ゆっくりと近づいていくと、その声が聞こえた。
「こ〜い〜しちゃったんだ♪たぶん〜気づいてな〜いでしょ〜♪星の〜よ〜るねが〜いこめっ」
「え、なに?恋しちゃったの?」
五条がペンを止めて、バッと顔を上げた。
そしてニッと白い歯を見せる。
「いやさー、思い出したんだよね。初詣で引いたおみくじ。あれにさー、"一途な思いが愛を深める。行動で示せば報われる"って書いてあったんだよねー。俺にも春が来たりして〜とか思って♪」
「あー、いいね。私は良い事書かれてなかったからなー」
"荒れる。耐え忍べ"
おみくじの言葉を思い出して眉を顰めた。
まぁ全然信じてはいないが。
「チェリーよりさくらんぼって曲のが私は好きだな。てか、来年はさ、桜を皆で見たいね。卒業式の日に、桜の木の下で、皆で写真撮りたいな。」
「あー、今年は忙しすぎて桜もうどこも散ってるからなー。」
五条はペンを回しながら頬杖をつき、そして思い出したようにまた笑った。
「さくらんぼはあれだよな、愛し合う〜ふた〜り〜しーあわせの空〜」
「「とーなりどおしあーなーたーとわ〜たしさくらんぼ〜♪」」
レイも被せて歌い出した。
「え、つーか、そのあとなんだっけ?」
「えー、知らないの?」
「いやうろ覚え」
もー、と言いながらレイは口ずさんだ。