第20章 curse
「しかもあいつは頭脳明晰だしな。あの冷静さも相まってあいつの強みは手数の多さだけじゃねぇ。」
「だよねだよね!やっぱ傑は最強だよね!?
悟とそんなに変わらないよね?!」
「……なんだお前、その謎の反抗心は。」
クマは内心もう完全に五条の方が夏油よりも圧倒的強さだと思っている。
恐らくあいつに適う奴はこの世にいないのではと。
それは恐らく夏油も分かっていることだろう。
それをあいつがどう感じているのかも…わかる。
さっきから黙って聞いていた伊地知は、ついに不安を吐露してしまった。
「あの……私は…やはり皆さんほどの才がないように感じるのですが…」
もうずっと思ってきたことだ。
すごい先輩たちばかりを目の当たりにして、レイや夏油やクマに訓練をつけてもらったりこうして任務に連れて行ってもらったりしても、自分の無力さを実感させられているだけだった。
「術式はな、生まれながらに体に刻みつけられたもんなんだ。だから呪術師の実力っつーよりか、適正は遺伝でほぼ決まっちまう。
確かにお前の術式は低レベルすぎる。今後もこの調子だったらそれは確実に遺伝だから、諦めるほかねーな」
「えっ…」
容赦のないクマの言葉に、伊地知は混乱してしまった。
まるでトドメを刺されたかのようだ。
そこでレイは慌てたように話し出した。
「呪力しか扱えない人でも戦い方はあるよ?
たとえば、簡単な式神や結界術は術式に関係なく誰でも扱えるし。
あ、それに例えばほら、森さんとか佐々木さんとか、他の補助監督の人たちも、強力な帳を下ろしたり、状況判断能力とか危機察知能力には長けているでしょ?」
「あーだな、伊地知、お前ももしもこのまんまだったら補助監督になれ。そしたらおいらの部下としてコキ使ってやる。」
「こらクマ、また森さんみたいに足に使おうとしてるんでしょ〜」
「なんつー言い草だレイ!
あいつはおいらの大切な部下なんだぞ!」
「・・・」
伊地知は言い合いをする2人を横目に、なるほどと考えてしまった。
自分がもしもこのままなにも覚醒できなかったら、補助監督…というのもありかもしれない。
こんな自分でも、少しでも呪術会の役に立ちたいと思っているからだ。