第19章 torture
私はその日、クマ先輩と任務へ出ていた。
散々罵倒され、しごかれ続けた私はもう心底疲れてしまっていて早く高専に戻って爆睡したいと、そればかり考えていた。
そして、帰り際に、森さんの車内の中でクマ先輩のスマホが鳴った。
「なんだ、グラサン野郎」
«******»
「あぁん?」
«******»
「言ってる意味がわからねぇな。てめぇ寝起きか?」
«******»
「…はっ、あのクソ大バカ嘘つき野郎が。」
ピッ
「・・・」
「あの…どうかされましたか?」
「…伊地知、お前はこのまま高専に戻れ。
おいらは降りる。というか、飛ぶ。」
「っ?!」
声を発する間もなくクマ先輩は窓から飛んでいってしまった。
クマ先輩は非術師からは目視できない術を身につけてはいるが、その突然の行動には唖然とする。
森さんも慌てていたが、森さんとクマ先輩の信頼関係ともいうべきか、ひとまずはそのまま私たちは高専へと向かった。
私は先程の疲れと眠けが一気に吹き飛んでしまった。
廊下で泣き喚いて暴れているレイさんを、夜蛾先生と五条さんが押さえつけている。
いつも落ち着いていて笑顔のレイさんのそんな光景を見るのは初めてで…私は目を見開いて突っ立っていることしかできなかった。
「うわぁあああ!!!嘘!!絶対!!嘘ぉ!!」
「落ち着け神無月!!」
「レイ!俺が行くから!」
そしてしばらくして彼女は、目眩を覚えたように崩れ落ちた。
立っていられなくなったらしい。
そんな彼女を起こそうと五条さんが肩を支えるが、それでも力が全く入らないらしく、五条さんは彼女を抱き上げた。
その間もずっと彼女は泣きわめいている。