第19章 torture
そしてその頃、夏油さんとお付き合いしていた彼女は
神無月レイさんという方だった。
彼女もまた2学年上の先輩で、夏油さん同様とても優しくて、2人はお似合いのカップルだと思った。
見た目は不良カップルにしか見えないけれど、中身はとんでもなく優しい2人。
本気で想い合っていると、こんな私でもわかった。
彼女は夏油さん以上にピアスをつけている。
両耳とも耳ではないかのように、もうすごい。
そしてルビーのピアスが一際輝いて目立っていた。
それが夏油さんからの贈り物なのだと知った日は、あぁなるほどととても羨ましく思ったことを覚えている。
私もいつかそんな思い出を誰かと作ってみたい、なんて思いながら。
レイさんは夜蛾先生と同じように高度な呪骸を作り、扱うことができる上に、夏油さんと同じ呪霊操術まで操れることを知って驚愕した。
もちろん彼女もとても強かった。
けれど、誰よりも純粋で誰よりも繊細で、そして、誰よりも脆く儚い先輩だった。
そんな彼女が生み出した特級呪骸である"クマ先輩"
当時の私は、彼の存在ほど驚いたことはない。
本当になにもかもがすごかった。
私に対してボロクソに悪態をつきながらもいろいろなことを教えてくれた上に、私だけではなく、誰に対しても"師"のような存在だった。
もちろんただの愛らしいクマのぬいぐるみという見た目なのだが、あまりに口が悪く、目上の教師や上層部、補助監督の面々に対してもあまりにも粗暴で威圧的かつふてぶてしい態度。
それでもどんなときでも間違ったことは言わなかったし、しなかった。
彼の言動、行動、その全ては正義そのものだったように感じる。
もちろん、可愛らしい面も多かったため、私も含め、周りは癒されていたに違いない。
私は彼女のこともクマ先輩のことも、
決して忘れることはできない。