第19章 torture
東京都立呪術高等専門学校。
新入生として入学した私は、とにかく驚愕した。
凄すぎる先輩がいっぱいいる…
そういう印象しか持たなかった。
1つ上の先輩は灰原雄さんと七海健斗さん。
どこか対照的なこの2人でも、とても信頼し合っていて親友のように見えた。
あんなことがあるまでは……
そして2年上の五条悟さんは、背が高くて白髪で常にサングラスを掛けていて、テンションが異様な先輩。
御三家の中でも一際有名で、五条家で生まれた天才呪術師・五条悟のはずなのに、そこにいたのはあまりにも想像とかけ離れている人。
不良としか言いようのない姿だし、なにより常にふざけている印象。
とにかくなにもかもにテキトーな感じ。
この頃の五条さんの一人称は "俺"
馴れ馴れしくて、絡みも凄まじくて、どう対応していいのか分からずとにかく困惑していた。
しかし、圧倒的な力と才能の程は本物だった。
よくそんな彼から助けてくれたのは夏油傑さんだ。
彼もまた、特級呪術師として五条さんに引けを取らないくらいに強い…いや、強かった。
彼は五条さんととても仲が良いらしく、いつもつるんでいた。
しかし……
五条さん以上にガラの悪い不良に見えた。
両耳の大きなピアスに、小さな稲妻型のピアスとクリスタルのピアス。
長い髪を束ねたり、たまに下ろしていたり、それでいてなぜだか制服のズボンをボンタンに変えている。
この学校は制服の改造が自由なのか?と驚いた。
しかし夏油さんはその見た目とは裏腹に、とっても優しくて言葉遣いも丁寧だった。
いつも何かと気を遣ってくれて、後輩想いのようだった。
灰原さんをはじめとした後輩たちにもとても尊敬されている印象だった。
もちろん私もとても尊敬していたし、頼りにしていた。
そんな夏油さんが…まさか……
私はこの頃は当然そんなことは微塵も予想していなかったし、信じられなかった。
なんなら今でもあれは、現実じゃなかったんじゃないか?
夏油傑という人間はもともと存在していなかったんじゃないか?
と思う時がある。