第19章 torture
「僕はさ、性格悪いんだよねー」
突然、五条さんはそう切り出してきた。
「知ってます…」
「伊地知、あとでマジビンタ!」
えっマジビンタ?
ビクリとしだした途端にまた五条さんは喋りだした。
「教師なんて柄じゃない。そんな僕がなんで高専で教鞭をとっているか、聞いて。」
「な…なんで…ですか?」
「夢があるんだ…」
五条さんはこの時、とても静かで柔らかい声で言った。
目隠しをしているのに、どこか遠くを見ているのだとわかった。
「夢…ですか…?」
「そっ!悠仁のことでも分かる通り、上層部は呪術会の魔窟。保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿。腐ったミカンのバーゲンセール。
そんなクソ呪術界を、リセットする!」
「・・・」
「上の連中を皆殺しにするのは簡単だ。でもそれじゃ首がすげ変わるだけで変革は起きない。そんなやり方じゃ、誰もついてこないしねー。」
「…変革……」
「だから僕は教育を選んだんだ。
強く聡い仲間を育てることを。」
五条さんの口調は、また緩やかになった。
また遠いところを見るような、そんな印象だった。
「若人から青春を取り上げるなんて許されてないんだよ。
何人(なんびと)たりともね……」
そして私は気がついた。
彼が、何を思い出しながら語っているのかを。
それからこれは、私を少しでも励ますための、
彼なりの慰めなのだと。