第17章 existence■
2人同時に方位磁石を確認すると、その針は五条の先程のものと同じように、針が勢いよくグルグルと回り、そして浮かび上がった針の先の赤色が、ある方向をずっと指していた。
「多分こっちだ!」
2人は猛スピードでその方向へと走った。
「っ!!なっ?!レイ?!」
五条が叫んだ。
崖ぶちに立って前を向いているレイが見える。
夏油がすぐさま駆け寄って彼女の腕を引こうとした瞬間、それは間に合わず、レイは下の海へと落下していってしまった。
それと共に、夏油も追うようにして落ちていった。
「っ!!おい!!……えー…」
五条はひとまず2人を信じ、呪霊の相手になることに決めた。
「かかってこいよ。この島丸ごと爆破してもいいか?
もうあの2人はいないことだしな?」
そう言って五条は両手を組み始めた。
「…術式順転・蒼……術式反転・赫…
…………………虚式・茈………………!!!!」
夏油は落下していくレイの腕を、落ちながらも空中で掴んで呪力で引き寄せた。
ギュッと抱きしめつつ、もう片手で呪霊を引き出す。
水面ギリギリでそれに乗ることができた。
「……はぁ…… レイ…」
彼女の胸に耳をつける。
心肺は異常無し。息はあるから気絶しているだけのようだ。
急いで怪我をしている箇所がないかを調べるが、どこも問題なさそう。
安堵のため息が漏れ、彼女の乱れた髪を整えた後、キスをしてからギュッと抱きしめた。
彼女のいつもの香りをめいっぱい吸い込む。
「…よかった… レイ…」
そのとき、
ドッカーン!!!!!!!
バキバキバキ!!!!!!
凄まじい音が耳を劈いた。
レイから体を離して振り返ると、島の大半から大煙が巻き起こっていて、誰の仕業かは一目瞭然だった。
上から見下ろすと、島の一部がなくなっているかのようだった。
「随分と派手にやってくれたな…悟…」
結局、全ての本体を五条がやっつけてしまった、ということだ。
複雑な心境になりながらも、とにかくレイを傷一つなく救えたことに心底安堵しながら五条の方向へと向かった。