第16章 division
なんとか高専に、夕方には戻ることができた。
「あ〜つーか、さいっあくだよ!あのグラサン気に入ってたのにぃ〜!クマ野郎のせいだからな!」
「てめぇが心掻き乱されてんのが悪ぃんだろーが。
にしても……人間はやはりどんな奴でも弱いんだな…」
クマを脇に抱えながら廊下を歩いていた五条が突然くるりと踵を返し始めた。
「なー、俺グラサン買ってくるわ今すぐに」
「ああん?」
「あれがねぇとやべえんだよ。目が疲れちまってしょうがない。最悪、目が潰れる。」
クマはドゴッと五条の脇腹を殴った。
「っう!なんだよ!」
「一旦教室に戻れ!!」
「だから俺の話聞いてたか?!この綺麗なお目目が潰れたらどーしてくれるわけぇ?!」
「潰れねぇよ…それにな、万が一潰れちまったら、おいらがお前の目になってやる…」
立ち止まったまま、見つめ合い、暫しの沈黙が流れる。
ポカン顔の五条と真剣なクマの瞳が交わる。
「・・・え」
「いいから戻れ!!っつってんだよ!!」
あまりのクマの気迫に五条は根負けした。
不機嫌そうにつかつかと歩きながら、んだよこいつ…と呟く。
クマは脇でひたすらスマホをいじっている。
「はぁーあ…しゃーねぇ…
アイマスクどっかにあったっけなー」
そう言いながら教室のドアを開けた。
ガララッー…
パンッ!!!
「っっっ?!?!?!」
「「ギャハハハハハハハハハ!!!!」」
皆の笑い声…
何が起きたのかわからなかった。
自分の視界が遮られていて何も見えない。
もしかして……
「俺の目ん玉ホントに潰れたー?!?!」
「違うよ五条。」
硝子の声が聞こえた。
「お誕生日おめでとう〜!!!!!」
レイの明るい声。
「おめでと、悟。ぶふっ…」
夏油の噴き出している声。
「おいてめーら!おいらにもクリームかかっちまったじゃねぇかよ!」
クマが脇からするりと抜けた。