第16章 division
顔に手を当てる。
ベトベトの感触。
甘ったるい匂い。
口に入ってきたその味。
「………甘……」
これがケーキなのだということを認識するのにそう時間はかからなかった。
目を擦りつつ片目を開くと、大笑いしている3人と、
クマが、うめーと言いながら顔にかかっていたクリームを舐めているところだった。
「あーははっ!やばい笑いが止まらないっ!けどっ
見事命中してよかったあぁ〜結構緊張してたんだよ」
「ふははっ…レイの呪力コントロールはかなり正確だったよ」
レイの頭をポンポンしながら褒めている夏油たちを五条はボーッと突っ立ったまま見つめている。
「あれぇ?感激しちゃって喋れなくなっちゃった感じー?」
硝子の言葉に、五条は一気に我に返った。
「おいっ!ふざけんなよ俺の美しいお顔をどうしてくれる?!ほんっとこーゆー時にグラサンしてないとかマジ不運。」
レイに渡されたタオルでケーキを拭う。
「はい。改めてお誕生日おめでとう。」
開けた視界から、にっこり笑うレイが映る。
その手にはプレゼントの箱。
「・・・あ、りがとう」
「開けてみてよ」
「ちょっ、と…待てよっ、手ぇ洗ってくる!!!」
どこか照れたような顔でドタバタと走っていってしまった。
3人は顔を突合せて笑う。
「はー面白かったぁー」
「悟が照れてるところを見られるなんて、ホント一年に1度しかないならな」
「あとあいつのマヌケ面もね。にしてもあの様子だと誕生日忘れてたっぽいね。去年は祝え祝えってうるさかったのに。まぁ、あんなことがあった後だしね…」
その言葉には皆表情を歪めた。
「おいらマジ焦ったぜぇ。あのバカがグラサン買いに行こうとするから」
レイはありがとうの気持ちを込めてクマの頭を撫でた。