第16章 division
「黒閃は、打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪みだ。つまり集中力ありき、運ありきといったところだ。」
そして…
「黒閃発動の経験者とその他の者では呪力の核心との距離に、天と地ほどの差がある。…って聞いてんのか?!」
「ハッハッハッハッハッひーはははっ!!!」
五条は両手を広げて背を仰け反らせまだ笑っている。
普段意識的に行っている呪力操作が無意識に自然にできるようになったり、
黒閃を決めた直後はアスリートでいう「ゾーン」に入ったような状態になり、自分以外の世界がすべて自分を中心に回っているような全能感も得られる。
これが後々、黒閃をキメたものとしてとある人物たちに語り継がれていくことを、今の五条はまだ知る由もない。
それはまだ何年も先の話。
「はっひひぃ〜なんか俺今、ちょ〜気持ちいいー!
北島康介もオリンピックでこんな感じだったのかな?!」
「それ以上ハイテンションバカになんなよ」
クマは呆れ声でスマホを取り出した。
そしてそれはたちまちマヌケ声になる。
「あ…圏外だ…。」
そうだ、そういえばそうだったな。
前に来た時もレイのスマホも圏外だった。
まぁこの森だしな…しかし森に電話できん。
「今日はマジで急がなきゃならねーのにー!!
おいらがここでしくじるわけには行かねぇ!!」
「えー?なにー?今日なんかあんのー?」
「・・・なんでもねぇよ。
とりあえず呪力で浮け。圏内になるまで飛んでくしかねぇ」
「えぇ〜俺疲れてんのにぃ〜
つーか!あれぇ?!俺のグラサンは?!えっ!」
舌打ちするクマによって、五条は上に放り投げられた。