第16章 division
「おいシチサン!あそこを崩せ!」
「…はいぃ?!」
そこには何メートルもあるゴミの山。
「お前の十劃呪法で瓦礫に弱点を付与しろ!」
七海は言われた通りにした。
ガラガラガラガラガラ!!!!
ドガガッ!!!
それによって呪霊は瞬時に押し潰された。
「……おぉ…」
七海は自分でやっておいて驚愕してしまった。
十劃呪法で弱点を付与した建物を攻撃し、屋根や壁面を崩落させて敵を押し潰す。
まさに自分自身をも巻き込みかねない危険な術であるが、そんな術が今まさに生まれてしまった。
いつの間にかクマは隣にいる。
「破壊した対象に呪力を篭める、拡張術式。
せっかくだから名前でも付けろ。あーそうだ、ガラガラいっちゃってたからガラガラなんてどうだ?ぶははっ」
盛大に噴き出すクマを横目に、七海は呟いた。
「…ガラガラ……瓦落瓦落…か…。」
十劃呪法・瓦落瓦落
この技が、のちのち渋谷で七海を救う切り札の技となることは、今の七海はまだ知る由もなかった。
それはまだ何年も先の話……
「おし、片付いたようだからとっとと帰るぞ」
そう言ってクマは首から提げていたスマホを操作し耳に当てた。
「おー、森!終わったからはよ迎えに来い!」
「……あの…なぜ今回も森さんなのですか?森さんは2学年担当の補助監督では…?」
「あいつはおいらの部下なんだよ。」
無理矢理そのように扱っているだけでは…と思いながらも七海は今回の任務でますますクマに対して驚愕してしまった。
「あっ、そーいえば!イエスキリストの誕生日に、デンマークの酒を持ってこい!前に夢の国でデンマーク産の酒を飲んだんだが、あれはなかなかよかった。」
「・・・」
突然何の話だ?
全く脈略のない話に、七海はますますクマのことが分からなくなったのだった。