第16章 division
クマの視界にころりと入ったもの…
それを見て、たちまち顔を歪める。
「人間ってのはどこまでも勝手だな……」
七海はその声に反応して足元を見た。
なるほど…ぬいぐるみやらバービー人形的なものからお雛様的なものまで、1度は確実に大切にされたもののはずなのに、まるでその欠片も無かったかのようにこんな場所でゴミにまみれている。
首や腕がもげていたりもする。
「人形にだって、生命はあんのによ…」
「……私も…人間はクソだと思いますよ。呪術師なんかも同じです…命の尊さを分かっているのかいないのか…。」
七海のその言葉に、クマは視線を向けないまま冷静に言った。
「お前はリアリスト然とした奴に見えて、強い使命感の持ち主に見える。仲間や、呪霊による犠牲者を想う気持ちが強い。夏油傑みてぇにな。」
「…そうですか。まぁ確かに、五条さんより夏油さんのほうを尊敬していますが…」
「はっ、ウケるなそれ。」
「いや、事実ですよ。五条さんのことは信用しているし信頼していますが、尊敬はしていません。かなり振り回されているんでね。」
確かにあの沖縄の1件でも、結局1日伸ばすだとかなんだとか言われて七海と灰原が困惑していたのを知っているし、それ以外でも要所要所ある。
クマはそれを思って笑った。
「ふははんっ。
まぁあのバカは適当に受け流しておけナナミン」
「…あの人の呼び方を真似しないで貰えますか?
まぁシチサン野郎も嫌ですが…」
七海はいつもの不機嫌そうな顔をさらに不機嫌にした。
クマはくすくす笑っている。
こうして見ると、本当にただの愛らしいぬいぐるみなのだが、喋るとなんともいえないギャップにどうも惹かれてしまうのはなんなのだろうか…