第15章 disaster
呪霊に乗せて、なんとか夏油を硝子の元へ送り届けた。
硝子の術式によって夏油は回復した。
「レイ…あんたは大丈夫なの?」
ひたすら夏油の血を拭っているレイに、硝子は顔を歪めて言った。
しかしレイは夏油から目を逸らさずに返す。
「私は少しかすり傷と打撲くらいだから治療は必要な」
「ダメだ。」
突然被せてきた夏油の言葉に手を止める。
夏油は苦い顔をしてレイの手をハンカチごと握った。
「きちんと治療してもらえ。私はもう行く…」
「えっ!私も行くよ!」
「ダメだ。ここで待ってろ」
夏油はハンカチを握り締めたままよろよろと立ち上がった。
裂き切られた衣服をそのままに、踵を返す。
「っ待って傑っ!ほんとに…大丈夫なの?」
レイの震える声には振り返らずに、青白い顔をした夏油は思いのほか強く言い放った。
「これは私と悟の任務なんだ。最後までやり遂げる…」
とにかくまずはクマと悟を見つけたい。
そのあと天内理子の遺体を回収して…
盤星教を片っ端から探して……
いつもと口調も表情も、気迫も違う夏油に、レイは何も言えなくなった。
彼に待ってろと言われたら待っているしかない。
従うしか選択肢はない。
けれどまたあいつに出くわしたら?
クマはどこ?
こんなに胸が苦しくなったのは初めてだ。
レイは呼吸すらも苦しくなっていた。