第15章 disaster
「……え……す…ぐる?」
そこに居たのは、血まみれの夏油と、血まみれの天内理子。
そしてその夏油を見下ろしながら足で転がしている見知らぬ男。
男はこちらに気が付き、あからさまに不機嫌な顔をした。
「お?なんだまだいたのかよ、今度は女か?」
「傑に触れるな!!!!!」
レイは全身から憎悪を滾らせ、自分でも驚くほどの声量を発した。
「ひー、女ってやっぱピーピーうるせぇな。まぁ安心しろよ。術師なら死なねぇ程度に斬った。式神使いなら殺したが、呪霊操術となるとな。こいつの死後、取り込んでた呪霊がどうなるか分からん。ここで面倒ごとは避けたい。」
その瞬間、ビュンと勢いよくレイの中から数体の呪霊が男に飛びかかって行った。
「は、なんだお前も呪霊操術を扱ってんのか。めんどくせぇな。」
男は持っていた刀を振り回しながら俊敏に動き回った。
速すぎて目を見張った。
呪霊もたちまち切り刻まれてしまい、歯が立たない。
そもそも五条も夏油もやられている時点で自分に勝ち目はない…
物量戦
力量戦
接近戦
その他もろもろ全てが怠るのなら
もう…これしかない…!
「…呪霊操術……妖蝶魘夢……!!」
その瞬間、レイの翳した手の中から大量の妖蝶がヒラヒラと飛び出し、たちまち男の周りを飛び囲み始めた。
この妖蝶は、対象に対して夢を見せる。
つまり幻覚の中に堕としこみ、動きを封じ、我を失わせることができる。
男は今、夢を見ていた。
自分が孕ませた女性から生まれた男児。
その赤ん坊を抱えている自分。
"名前はなにがいいかしら?"
男は真剣に考え込む。
あー、名前な…そうだな…
こいつは男だし、何にでも恵まれてほしい。
呪力を扱えない俺とは違ってな。
あらゆる才と、周りの人間、環境、金、地位…
その全てに恵まれてほしい…だから……