第15章 disaster
「理子様…私はここまでです……理子様っ…どうか…」
「黒井っ!大好きだよぉう!!」
2人は抱き合って涙を流し、別れを惜しんでいる。
その姿を夏油は神妙な面持ちで見つめる。
「ずっとっ!これからもぉ…ずっとぉ!!」
「…っ…私も!…大好きです…」
どうにかここまで来られた。
あとはこのまま理子ちゃんを送り届けて、悟の連絡を待って…
得体の知れないあの男が何ものなのかは分からないが、悟なら絶対大丈夫なはずだ。
夏油はギリギリの場所まで天内を案内し、説明をする。
「ここが天元様の膝元。国内主要結界の基底。薨星宮本殿だ。」
「……ここが…」
「階段を降りたら門をくぐってあの大樹の根元まで行くんだ。そこは高専を囲う結界とは別の特別な結界の内側。招かれた者しか入ることはできない…同化まで天元様が守ってくれるよ。」
天内はその大きな建物と大樹を見上げてから俯いた。
そして、眉をひそめてスカートの裾をギュッと握った後、意を決したように顔を上げた。
その時、
「それか、理子ちゃん。引き返して黒井さんと一緒に家に帰ろう」
「…?!」
突然の夏油のその言葉に、目を見開く。
夏油の表情も声も、至極冷静であり、冗談で言っているのではないと気付く。
「担任からこの話を聞かされた時、あの人は、"同化"を"抹消"と言った。あれは、それだけ罪の意識を持てということだ。…うちの担任は脳筋のくせによく回りくどいことをする。」
夏油の顔が優しく柔らかい笑みに変わった。