第15章 disaster
「そんなに貪らないで少しは落ち着いて食べなよ」
そう言いつつも、可愛い空間で可愛いクマのぬいぐるみと可愛いパンケーキが似合いすぎていて顔を綻ばせる。
チラチラと視線を泳がせると、何とも幸せそうなカップルたちが目に入り、途端に羨ましくなってしまった。
「…いいなぁ〜。私も傑と来たーい」
「悪かったなおいらで」
つい声に出してしまっていたことに気が付き、ハッとクマに視線を移すが、全く申し訳なさそうな顔はせず、生クリームを鼻までベチョベチョに付けている。
「傑とここへ来れたとしても、クマも一緒がいいと思ってるよ?」
「…なんでだ。」
たちまち怪訝な顔つきになるクマに、レイはにっこりと笑って言った。
「だって私たちは、"家族"じゃん。」
あなたが生まれた時から、私たち3人一緒だった。
それからずっといつも一緒にいる。
だから家族以外の言葉では言い表せないよ。
クマはそれについては何も返さずに、黙々と食べ進めている。
レイがまたふと斜めの席にいるカップルに視線を移すと、女性が男性に向かって、あ〜んとフォークを差し出し、男性がパクリと食いついて笑いあっているところだった。
「お前は食わないのかレイ」
突然の問いかけに、急いで目を逸らす。
「え〜だって傑たちが心配でそんな気分にはなれないよ。食べたいのは山々だけどさぁ〜どうも喉を通らなそうっていうか…」
さっきからちらちら目に入る色とりどりのスイーツはとても魅力的なのだが、到底そんな気分にはなれない。
困り顔で紅茶をすするレイに、クマはもぐもぐ声で言った。
「じゃー、あいつ帰ってきたら、また来よーぜ」
「うん!だね!…えーそしたら私どれ食べよ〜」
数あるメニューに目を奪われていると、スマホが鳴った。