第14章 surreal
「はぁん?天内の首に3000万の懸賞金ー?」
«あぁ。呪詛師御用達の闇サイトで期限付き。明後日の午前11時までだそうだ。»
「なるほどね…ったく…」
ピッー…
心底めんどくさいという顔をしながら、夏油からの電話を切る五条。
その後ろで天内はひたすらあたふたしている。
なぜなら妙な奴らに囲まれているからだ。
「2、3、4人…っ皆同じ背格好じゃ!式神か?!」
天内の怯えた声を無視して五条は敵に向き合ってため息を吐いた。
「呪術師は年中人手不足だってのに…転職するなら歓迎するよオッサン」
「いやぁ?職安も楽じゃねぇだろ。そのガキ譲ってくれればそれでいい」
「はー、どこがいいんだよこんなガキ」
あからさまにウンザリし、一瞬で何体も消していく五条に目を見張る天内。
その天内を引き連れて走りまくる。
しばらくして見破った本体と思わしき者と対峙した。
「いいもん持ってんじゃん?なんでそんな弱いのか意味わからんわ」
「……なぜオレの術式を知っている…」
「お生憎様。目がいいもんで…ね。」
五条はサングラスを外した。
「俺の術式はさ…収束する無限級数みたいなもんで俺に近づくものはどんどん遅くなって、結局俺までたどり着くことはなくなるの。
それを強化すると"無下限"…負の自然数ってとこかな〜
−1個のリンゴみたいな虚構が生まれるんだ。そうするとさっきみたいな吸い込む反応が作れる。でも意外と不便なんだよねぇ〜
あまり大きな反応は自分の中に作れないし指向性にまで気を遣い出すと呪力操作がまぁーめんどーでー要は超〜疲れんの。
でもこれは全部順転の、ーー…」
天内の脳内では、今五条の言っていることが、甲高い早口言葉にしか聞こえなくなっていた。
「おいこら五条!んなことより早くトドメを刺さんかっ!」
いてもたってもいられなくなってついにそう大声を出すと、五条は心底面倒くさそうな顔をした。
「もー。まーいいや。ここまでは順転の術式の話。
こっちは無限の発散…」
そう言って構えだした。
その瞬間、天内も敵も息を飲んだ。