第14章 surreal
「あ〜にしても、とっとと終わらせてーなー
俺まだクマ野郎と全クリしてねぇゲームあんだよね。つーか俺があいつにゲームでもリアルでも勝てねぇとかこれリアル?!」
そう言ってごくごくと缶に口をつける五条に、夏油はため息を吐いた。
五条はそれに気づいてあからさまに不貞腐れた顔で上目遣いになる。
「んっ、なに?またなんか文句?」
「文句って…なぁ悟。
前にも言ったはずだが、一人称俺はやめなさい。」
「んぐ、ゲホ、またその話ー?」
「天元様に会うかもしれないわけだし。
私、最低でも僕にしろって話。」
五条は変なところにジュースが入り込んで咳き込みながら夏油を睨む。
夏油はスマホを見つめ目を細めだした。
画面にあるのは4人とクマが写っているディズニーでの写メ。
"俺も怖いんだよ。傑。
俺もレイみてぇにな、怖いんだ。この先が。
今の幸せが、一瞬で壊れちまうときが、来るのが…"
「なぁ、悟」
「んん、今度は何!」
「君が私に今朝言ったことは全部、
本当は嘘でも冗談でもないんだろ。」
陽の光で眉をひそめたサングラスが光った。
今日は異様に天気がいい。
「本気で思ってるんだよな…?」
目を合わせず呟く夏油を、五条はチラリと見てからまた缶に口をつけた。
「……お前を怒らせたくねー。こえーから。
でもさ、時々思うんだよ。俺も傑もレイも硝子も、みんなさ、もしも普通で、普通に出会えてたら…って…さ。」
もしも、俺らが普通の人間で、
普通の日常で普通に出会っていたら…
そう静かに呟く五条に目を見開く。