第13章 quarrel
「わかってくれる人の所へ行くから。もーいい。」
「・・・」
「レイのとこ行くわ。傑みたいにリアリストじゃねぇ俺らならきっと同類だ。だから、」
「だから?なんだ」
夏油の眉間のシワが濃くなっていく。
鋭く冷徹になっていくその瞳を真顔で見つめ、何度か瞬きをしたあと五条は虚ろな目をして言った。
「だからさ、レイを連れて、どこか遠くへ行くね。
俺も彼女も、当たり前の権利を当たり前に享受して、いつまでも幸福な人生を送ることのできるように…」
ガタッ
五条はそこまで言ってからハッとなって瞬時に立ち上がる。
座ったまま前かがみに俯いている夏油から、禍々しい呪霊がぐるぐると漂ってきたからだ。
無意識かもしれない。
ゆっくり顔を上げた夏油は冷酷さながらの瞳をカッと見開いていた。
「っ、じょーだんじょーだん!つーか、嘘!
ふははははははははっ」
「あ゛?」
夏油がついに立ち上がった。
伸ばしてきた指先からは真っ黒い呪霊がゆらゆらとこちらに向かってきている。
そしてもう片手で制服のボタンを開け始めた。
「えーっなになに、マジになっちゃって」
ゆっくりと歩いてくるのと同時に五条も後ろに下がっていく。
夏油のその殺気の立ちようは人間とは思えないくらいに禍々しい。
制服のボタンを開け終えた夏油は、髪を結っていた紐を取り去り、パサッと頭を振った。
それを見ていた五条もだんだんと不機嫌そうな顔つきに変わる。
「っは、毎回冗談通じない感じなんなの。
なんかムカついてきたわ、どっちがガキ?」
「黙らせてやるよ悟…!!!!」
そこから先はもうお互い止められなくなっていた。