第13章 quarrel
「俺もレイも、傑みたいにリアリストじゃねーってことさ。できる限り、幸福な人生を享受していたい。あるはずの青春を謳歌したい。いつ死ぬかなんて分からねーんだからさ。」
夏油はふーとため息ひとつついて、視線を落とす。
小さな蟻が懸命に地面を這っているのが見える。
「……死は万人に共通だ。誰にだっていつかは訪れる。その死をできる限り呪いによって理不尽を被ることの無いように非術師を助けていくのが私たちの役目だろう」
「お前はそれで満足なのかよ傑。」
「・・・は?」
顔を上げると、真剣な眼をした五条の蒼眼。
久しぶりにこんなに間近で見た気がした。
「お前は俺をなんだと思ってる?俺だって人間なんだぞ。人生を選ぶ権利も選択肢もあるはずだ。死に方を選ぶ選択肢だって、あるだろ…」
しかし夏油は顔色ひとつ変えずに目を逸らさない。
「普通の人間ならばそうだろうな。」
「あ?」
「しかし我々は普通じゃないんだ。異常なんだ。
むしろ私たちなんかは異常を期している。わかるだろ。」
険しい視線が交わる。
残暑のほんのり冷たい空気が掠めた。
「はっ、意味わっかんね。
さすがは正義感の強い正論ボーイだね」
ここでさすがの夏油にも頭に血が上った。
奥から絞り出すようにして声が出る。
「いい加減にしろよ悟……君の脳ミソは子供のまま成長が止まっているのか?」
「はん、それでもいーわ。傑がわかってくれねーなら、もういい」
「・・・なに?」
五条の口角が上がっていき、両膝に両肘を置いて前かがみになって上目遣いになる。