第13章 quarrel
2人の頭の中で、
その会話となんとも言えない感情と胸糞悪さが反芻された。
「俺さーもう呪術師やめるわ」
それは五条の一言から始まった。
「・・・は?」
一瞬本気で幻聴かと思った。
目を見開いて隣を見ると、ベンチにだらりと身を預けてペットボトルに口をつけている五条。
「いやさー、もううんざりなんだよね。ぜんっぜん遊べねーしー。マジ青春ねーじゃぁん」
その言葉に、夏油はこめかみに青筋を立てた。
こうなると、完全に切れるまでほんの少し。
「ふざけるな悟!君には強者としての役割がある!それを放棄してはならない。術師としての責任を果たせ。」
「あ?じゃーいつまでもこんな普通じゃねぇ生活してなきゃなんねってか?」
眉間に皺を寄せて横目で見てくる五条の顔は至極本気に見える。
冗談で言っているのだと淡い期待をしていた自分を呪った。
「そうだ。それは人にはない力を持った者の宿命だ。最期まで責務を全うしろ」
「責務?なんじゃそら。俺は自分の人生を生きてぇんだ」
「人生=責務なんだよ。目の前の現実から目を背けて使命を放棄するな。」
すると五条は少し押し黙り、そして視線を遠くに投げ、静かな声を出した。
「たまに、なにもかもを終わらせたくなる時があんだよ」
「・・・なんだってぇ?」
夏油の声はものすごく低い。
その声のすぐあとに五条は言った。
「俺も怖いんだよ。傑。
俺もレイみてぇにな、怖いんだ。この先が。
今の幸せが、一瞬で壊れちまうときが、来るのが…」
その言葉には口ごもってしまった。
何も言い返さなくなった夏油をチラリと見てから五条は言った。
「あー…お前には分かんねーかもな。俺と傑の考え方って昔っからぜんっぜん違うもんな。」
「・・・何が言いたい」