第13章 quarrel
しかしどうしたというのだろう。
これはどう見ても訓練ではなく喧嘩だ。
かなり離れたところにいるはずなのに、こちらにも突風や残骸が飛んでくる。
「っざけんなよ傑!!!」
「このままだと君を殺してしまいそうだ!ハハハ!」
どちらかというと、五条はこの喧嘩をやめようとしているようにも見受けられる。
「っ!ていうか…傑……え?」
レイはさらに目を見張った。
よく見ると、夏油はなんと、制服の前ボタンを全開にしていてカラーシャツが顕になっている。
そして、いつも後ろで綺麗に束ねられている髪は解かれ、乱雑に風に舞っていた。
いつものそのボンタンスタイルのズボンのおかげもあって、完全にガラの悪い不良…というか、超ヤバい輩にしか見えない。
あんな人がもしも前から歩いてきたら、確実に誰もが逃げ出すだろう。
「ふははははっ!夏油があーなってる時は、完全にブチ切れてるときだよ」
笑いながらチュッパチャプスの封をペリペリと剥がしはじめる硝子。
レイはただただ顔面蒼白にしてそのヤバい恋人を見つめる。
本当に傑なの?と疑いたくなるくらいに、そこにいるのは完全にイッてしまっている彼だ。
そしていつもの優しい目はそこにはなく、あるのは冷徹に見開かれた本気の眼光。
「ど…しよ……」
「今のあいつらの力はだいたい互角だからな。
どっちも死んじまったりしてな。ふっ」
クマが呑気な声でそんなことを言うので、ますます唖然としてしまった。
そんなことになりそうな気もしなくもないほど、目の前の2人の迫力は異常を期している。