第12章 nihilism
「にしても……今日、
私はちょっと妬いてしまったよ、レイちゃん」
「んぐっ?はい…?」
突然、冥冥に意味深なことを言われ、変な音を鳴らして肉を飲み込んでしまった。
「姉様を妬かせるとは、
なかなか罪深い人ですね、レイさん」
「は、はぁすみません…ていうか、何の話ですか?」
ムスッとしている憂憂の隣で、冥冥が艶めかしい笑みを浮かべて言った。
「随分と夏油くんにご執心なんだなぁと思ってね…
でもまぁ、分かるよ…。私も、彼のことは五条君よりも買っているから。」
「え、あ……そうなんですか…?」
傑とベタベタしすぎていたかな?
それともキスを見られてた?!
たちまち顔を赤らめるレイ。
「ニヒルな笑顔もチャーミングでいいと思うよ…ほら…」
そう言って冥冥はレイの顎を優しくつかみ、キュッと方向を変えた。
その瞬間に、向こうにいる夏油と目が合ってしまった。
彼は気がついたようにフッといつもの優しい笑みを浮かべた。
あれが…ニヒルな笑みってやつ?
私には最上この上ない大好きな笑顔なのだけど。
いつも目を無くして笑う彼は、空虚ともチャーミングとも違って、私にとっては神様みたいに天使みたいに、ただ暖かく感じる。
数秒見つめ合ってしまい、
恥ずかしくなって急いで視線を逸らした。
本当はもっともっと見ていたかったけど。
「でもね、私はたまに思うんだよ。愛は価値のあるものなのかってね」
「え?」
「私はね、昔から、
金に換えられないものには価値を感じないのさ。
なにせ、金に換えられないんだから。」
何の気なしに言っているようなその声色が、逆にレイの口を開かせた。