第12章 nihilism
地平線の向こうで、綺麗な夕陽が浮かんでいる。
少しずつ、人がいなくなってきている。
今夜は冥冥の別荘に泊まらせてもらうのだが、その前にここでBBQをしようということになったのだ。
しかも用意してくれた肉とか食材もまさに絶品だった。
この夕陽を見ながら、大好きな皆とこんなに贅沢なことをできるなんて…
「あっ!冥さん私やりますよ!」
いつまでも焼き担当をしている冥冥にレイは声をかける。
「いやいいんだよ。私は私の手で好きなように食材を可愛がるのが好きなのさ。こうやってね…」
トングの先を見ると、絶妙な焼き加減の肉やハンバーグといった品々が裏返されている。
「素晴らしいです姉様!!」
憂憂が拍手をするのでレイも、すごいです!と言いながら拍手をする。
そんなどこまでも純粋なレイだからこそ、
冥冥からも、どんな人からも、愛されてしまうのだろうと硝子は見ていて思った。
そして、
「私は正反対だけどねっ」
と言いながらタバコを吸い、ビールを飲む。
正反対と言えば…あの二人もだけど…
と思って視線を流すと、うめえぇと言いながら肉を食いまくっている五条と、その隣で全然食事には手をつけずに夕陽をボーッと眺めている夏油がいた。
その視線は、夕陽からたまにレイに移っていることが分かる。
「お前はもう食わないのか?硝子」
隣でクマが、小さい牙で骨付き肉を引きちぎりながら言った。
「私は酒飲めりゃそれでいーのっ」
「はっ、お前も大概だな。あん時おいらの前で酔い潰れやがったくせに」
TDCでのことを言っていると分かった硝子は少し頬を膨らめた。
「それはもう言わないって約束だったでしょー?!」
「ふん、また約束かよ。人間ってのはどーしてこうも……」