第11章 throbbing
「えっ、ちょっとこれって掴まるところないわけぇ?!」
「そーそー!知らなかったぁ?」
タワーオブテラーという乗り物には握れる場所がどこにもないことに気がつく。
それだと恐怖を少しでも耐え忍びそして逃がす術がないも同然。
「知るわけないよ!えっえっ待って待ってこれ怖い!怖すぎる!」
「えー俺も怖ァァい〜!!レイ掴まらせて!」
明らかに余裕の笑みを浮かべているくせに、横からガシッと腕を掴まれた。
「えっ?!なっ?!」
「私も掴まらせてくれレイ」
「はぁっ?!」
五条と夏油の間に挟まれているため、わざとなのか正気なのか、2人にしがみつかれる形となってしまった。
ぐんぐんと上に上がっていく…
「ちょっ…と…ま…私はどうすればいーの?!」
「おっ!ほら見ろよ、やっぱ絶景じゃーぁん!」
そう言われて恐る恐る目を開けると、
目の前には、まさにTDC全体がキラキラの宝石みたいな輝きを放って美しく広がっていた。
……絶景の夜景。
「っわ……すご…」
あまりの素晴らしさに息を飲み、言葉を失った。
その瞬間、両側の2人に掴まれている腕にギュッと力が入るのがわかった。
「っ?!ー……」
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「ひあぁぁぁぁアアア!!!!!!」
「アハハハハハハハひっはぁぁーーー!!!」
「っう…………っっ…!!!」
一気に下に落下し、そして
3人の別々の声色が同時に重なった。
ピタリと止まって
そしてまた登っていく。
「まっまっまってまって…いっいやだやだやだ…」
「あっははははははもーサイッコーだわ」
「ふー………」
そしてまた綺麗な夜景が見えたかと思えば、
また急降下した。
これを何度か繰り返し、最後の方はもう声が出なかった。
それでも、絶景は目に焼き付けたくて、
レイはどんなに恐怖しても決して目は瞑らなかった。