第11章 throbbing
「ふん、で、お前は禁酒できたのかよ?」
「ははは、できるわけないじゃーん私が!…絶対バレないように、なんとかちびちび頑張ってましたっ!バレてたら夏油に殺されてたわ!」
グイッとグラスを飲み干してから、硝子はまた店員を呼び止めた。
クマの新たな酒も一緒に注文する。
「やっぱレイは酒よえーんだな」
「いや、弱いのかは分からないよ。ただその1件から、夏油が絶対にレイに酒を飲ませなくなったのよ。一滴も。」
「んなことできんのか?」
「できるに決まってんじゃん。だって初めからレイは、夏油の言うことしか聞かないくらい夏油信者なんだよ?夏油が、お前は酒が弱い、飲んだら死ぬ的なこと言えば、レイはまるで暗示にかかったかのように本気でそう思い込むタチなんだから」
「…つーか…そもそもお前らって未成年だろが…」
すでに顔を火照らせている硝子を横目で睨みながらもぐもぐ咀嚼する。
お待たせしました!
そう言って店員が持ってきたそれは、赤黒い液体と透明の液体。
「なんだ…これは?」
「これはワインってやつ!赤も白も試してみよーぜ!そのソーセージには赤が合うよ!食ってから飲んでみな!」
ほら、と言われてクマは言われた通りにする。
目だけで、どう?どう?と言っている硝子を横目で一瞥してから答える。
「うー…まぁ合わなくも…ない…」
「でしょ!じゃー今度は白ね!ほい!」
そんなこんなで次々と酒を飲み続け、食べ続け、周りの人たちが、訝しげに硝子とクマのぬいぐるみをチラ見していることには気が付かないほど盛り上がっていた。