第11章 throbbing
硝子はピスタチオの殻がうまく剥けないクマを手伝いながら言った。
「まぁでもさ、レイの親友でもあり保護者的立場の私から言わせてもらえば、夏油はレイのことを凄く大切にしてるからさ。2人の幸せを願ってるわけよ!」
「レイの保護者的立場はどちらかとゆーと傑じゃね」
「っ、あー、それな。くくく」
硝子の顔は既に紅潮している。
グラスを提げに来る店員が自分たちのところにばかりやたら忙しないのでクマは顔を顰める。
「なら硝子、1つ約束してくれよ」
「んあー?なぁに?」
クマは外の一点を見つめながらじっとしている。
人がさっきから通りすぎていて、どこを見ているのかは全くわからない。
皆カップルだったり、親子だったり、同じコスプレをした集団だったりする。
「あいつを、レイを、ずーっと見守っててやってくれよ。たとえおいらや傑や五条がそこにいなかったとしても。」
唐突に真剣なことを言われ目を丸くする。
ピスタチオを剥いていた手を止めてクマを見つめる。
「は…?何言ってんの…」
「いいから約束しろ!約束好きだろ?」
キリリとした目付きでも、ぬいぐるみはやっぱりなんの迫力もなくて、普通に可愛いと思った。
約束が好きってのはどこから来たのか意味がわからないけど。
「うん。分かったよ。てか、別に言われなくたってそんなことわかってる。私を誰だと思ってんだよ。」
クマはくくくと笑って何事も無かったかのようにピスタチオを食べだした。