第11章 throbbing
なぜかそこには夏油に抱えられているレイと、めちゃめちゃ不機嫌そうな五条がいた。
「っえ!どーゆーこと?なんでっ」
「合コンに連れてってたんだろ?飲み会の最中にレイがひたすら傑にLINEしてたんだよ。こーゆー場合ってどうしたらいいですか?ってな」
何かある度に夏油にすぐに相談や質問をするレイだから、それには納得した。
しかし…
「どこでなにしてたの?レイは…」
「スーツの男にタクシーで連れ去られる寸前だったんだぞ。お前が目ぇ離すからだろ」
「…あー…ごめん…ほんと。」
さっきからずっと黙ったままの夏油は腕の中のレイをひたすら心配そうに覗き込んでいる。
彼女は火照った顔をしてぐったりしている。
「反省してます…。で、どうやって連れ帰した?」
その問に、五条がニヤリと白い歯を見せた。
「そりゃもう強引に、乱暴に、狡猾に。」
「っえ?!うそ?!」
「はは、うそうそ。でも半分ホント。
ここにいる傑おにーさんがね。」
そう言って五条は親指で夏油を指した。
その後の五条からの説明には目を見開いた。
いつも通り深夜徘徊していた五条と夏油は、レイからのLINEを受け取ってから、聞いた店の近辺で待機していたらしい。
すると、ヘロヘロに酔っ払ったレイに肩を貸しながら出てきたスーツの男がタクシーを呼び止めたのが目に入り…
瞬時に五条と夏油が駆け寄って、乱雑に男を引っ張り、そして男の胸倉を掴んだのは夏油だったらしい。
いつもの笑みで微笑みながら、
"この子は私のものなんですよ。
お兄さん、殺されたいのかな?"
と一言言って勢いよく押し飛ばし、そのタクシーにレイと3人で乗り込んでここまで来たということだった。
五条が言うには、その時の夏油の笑みが人を殺めそうなほどのオーラを醸し出していて、超絶怖かった。との事。
夏油が誰かに乱暴な真似をすることが予想外すぎて驚きだった。
「し、しばらくは禁酒します…」
「あぁ、そうしろよ。それとレイを合コンに連れてくのも禁止だ。2度目はないと思ってくれよ、硝子。」
そう返した夏油の笑みも怖すぎて萎縮したのを覚えている。
そしてその時初めて知ったんだ。
レイに対する夏油の気持ちを。