第2章 call■
ますます言いづらくなっているこの状況をどうにかしたい。
タジタジになっているレイに、五条は言った。
「じゃあさじゃあさ、いきなり傑だと緊張しちゃうだろうから、まずは俺の事を呼んでみてよ。
…さ、と、る、ってね!」
「っえ…」
その言葉に、突然夏油が口を挟んだ。
「それはダメだ」
3人は驚いたように目を見開いて夏油を見る。
彼は珍しく少し不機嫌そうな顔をして五条を睨んだ後、そのままレイを真剣に見た。
「私のことを先に呼んでもらう」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
見つめあったまま数秒沈黙した後、チラと視線だけ五条と硝子に移すと、ホラ早く言え!といわんばかりの2人と目が合う。
その瞬間、夏油にグッと顎を掴まれ、視線を合わされた。
「よそ見をしない」
ポッと顔が火照り出したのがわかったが、生唾をゴクリと飲んでから恐る恐る口を開いた。
「す…ぐる…」
「・・・ん?聞こえないな。」
わざとらしく耳に手を当ててそう言われる。
「すぐる…」
「もっと近くで喋ってくれ」
絶対に今ので聞こえたはずなのにそんなことを言われて少しムッとしたレイは夏油の耳に口を寄せてコソコソ話のように手で覆ってから言った。
「…傑!」
向かいの席で噴き出している2人の声が聞こえる。
夏油はレイの手を耳から剥がして掴んだまま、今度はレイの耳に口を寄せた。
「…ありがとう。レイ…」
その甘い囁きのせいで一気に鳥肌が立ったことには3人とも気がついていないだろう。
体の力まで抜けてしまった。
そのあとは、そのままずっと隣で夏油が手を握ってくれていて、いつの間にか彼の肩に寄りかかって眠っていた。