第2章 call■
「それよりさぁ、レイ、どうしていつまでも苗字にくん付けで呼ぶわけ?」
「っえ!」
突然真面目な声色でそんなことを問われ、食べていたクッキーが喉に詰まりそうになった。
「ど、どうしてって…」
「硝子のことは硝子って呼ぶのに、なんで俺と傑だけそんな他人行儀な呼び方なんだ?」
レイは顔を赤らめて髪を弄り出す。
これは戸惑っている時の癖だ。
もちろん名前で呼びたいのは山々だ。
けど、今更どのタイミングでそう切り替えればいいのかわからないし、もう遅いと思っている。
「まぁ、いいじゃないか、悟。それより前から言おうと思ってたんだが、悟も一人称"俺"はやめた方がいい。」
「あぁ??」
「特に目上の人の前ではね。"私" 最低でも "僕" にしな。
年下からも怖がられにくい」
冷静沈着な態度でそう言う夏油に、苛立ったように五条は言い返した。
「はっ。やなこった。つか、今そんな話はしてねぇ。
傑だって、レイに傑〜って呼んで欲しいくせに」
意地張っちゃって!
そう言いながらもニヤニヤとした視線を隣の硝子に流し、なぜだか硝子もニヤニヤとしだしている。
えー、ど、どうしよー。
でも考えてみたら、これは絶好のチャンス。
今しかない…かもしれない。
レイは気付かれないように深呼吸した。
「じゃ、じゃあ…次からはそう呼んでもいい、かな?」
「次?そう言っててきっと次ん時忘れてるぞ。
今だ。練習も兼ねて、今呼んでみろよ」
偉そうに…
そう思いながらおずおず隣を見ると、夏油まで意地悪そうな笑みを浮かべていてドクンと鼓動が跳ね上がり、口を噤んでしまった。