第10章 dreaminess■
暫く沈黙が流れ、そしてそれはクマが破った。
「夏油傑。お前は神無月レイが大好きだよな」
「あぁ。もちろん。本人には恥ずかしくて言えないけどね、愛しているよ。
これ以外の言葉は見つからない…かな…」
愛しい存在の頬を指で撫でながら笑ってそう言う。
彼女は深い眠りに落ちているようでとても暖かい。
なにか夢でも見ているだろうか?と気になった。
「そうか。おいらも大好きだ。だから1つ約束してくれ」
「約束?」
「人間は約束が好きだろう?」
ニヤリと笑うクマ。
ブブッと夏油のスマホからバイブ音がしたが、無視をする。
「レイに悲し涙は流させないって。」
夏油は一瞬目を見開いたかと思えば、すぐに眉をひそめて優しい笑みを浮かべた。
「今さら何言ってんのさ。
約束もなにも…そんなこと当たり前だろ」
ジィとクマに見つめられた後、またクマは聖書に視線を戻した。
「なぁなぁホントに眠らないつもりなのか君は…」
「おいらのことは気にせず電気を消せ。暗くてもおいらは本を読むことができる」
「…そうだったのか?」
そんなの初耳だ。
なら初めから言ってくれよと思いながらスマホを確認する。
"寝てる〜?まだ起きてる〜?"
先程のバイブ音は五条からのLINEだったらしい。
「何が言いたいんだあいつ…」
そう呟きながらそれを無視してスマホをサイドテーブルに置く。
「おやすみ…」
まだ聖書に熱中しているクマと、隣で安らかに寝息を立てているレイ両方にそう言う。
愛しいその額に唇を寄せてから電気を消した。