第10章 dreaminess■
夏油がふとスマホの時計を確認すると23:00を指していた。
待ち受けは今日皆で撮った写メ。
五条の前で全員強制的に変えられたのだ。
それを画面が暗くなるまでボーッと見つめていた。
「クマ助。そろそろ寝ないか」
このままクマの勉強会に付き合っていたら、本気で朝になってしまう気がしてそう声をかけるが、聞こえているのかいないのか、クマは真剣な瞳を聖書から離さない。
「お!聞け傑。マタイによる福音書第7章だ。」
「いや…さっきから、なんとかによる福音書の何章とか言われてもよく分からないよ」
クマは無視して続ける。
「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。
…っつーことだ。わかったか?」
「・・・」
目を僅かに見開いた夏油の瞳を、クマが捉えた。
全てを見透かしているような煌々としたそのクマの目が異様に大きく感じて目が離せなくなる。
"求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。"
頭の中でクマの言った言葉を反芻させる。
この言葉の意味は…
そしてクマが言いたいことが分かって暫く沈黙した。