第10章 dreaminess■
「おい、傑にピッタリなのがあるぞ!
ルカによる福音書6章…」
「ん?なに、ピッタリ?」
夏油はレイの髪を撫でていた手を止めた。
「人を裁くな。そうすれば、あなたがたも裁かれることがない。人を罪びとだと決めるな。そうすれば、あなたがたも罪人だと決められることがない。赦しなさい。そうすれば、あなたがたも赦される。与えなさい。そうすれば、あなたがたにも与えられる。
んー…これは…
人のいい所を探せという簡潔な話でもねーな…」
クマはモゾモゾとお腹の辺りをかきながら言った。
「というか…なぜそれが私にピッタリなんだ?」
夏油は納得のいかない声色で問いかける。
「だって傑、お前は正義感の強い優男なんだぞ。だからこそ、決して赦せない人間や、赦せないことがあるだろう。」
「・・・」
その小さな頭の中に、一体どういう思考回路が渦巻いているのだろうかと考えてしまう。
「私は…人を裁こうと思ったことはない」
「ああ。無いからこそ危険なんだお前の脳ミソん中は。」
「・・・どういうことだ?」
夏油の片眉がピクリと上がる。
「お前ん中で圧迫されていく、その憎悪がだよ。」
「…憎悪?」
「お前のような奴ほどその正体に気が付かない。その危険因子は目には見えないからなかなか取り除けない。…いいか傑、お前ほどの力の持ち主はそれを掌握していかなくちゃならない。そうじゃねぇと…わかるだろ。」
押し黙っている夏油を無視して、クマはそのまままたページを捲っている。
はぁ…とため息ひとつつく。
五条悟は正反対の性格だから大丈夫とも言われているような気もした。