第10章 dreaminess■
イッツアスモールワールドは五条の言う通り、本当にただ船に乗っているだけなので脚を休ませることができた。
けれど、目だけは休まらない。
そこかしこに可愛い人形が歌を歌っていて、装飾も綺麗でまさに夢の空間のなにもかもに目を輝かせた。
「おいクマ野郎、お前もあそこへ行って踊ってこいよ。案外違和感ねーよ?誰にも気づかれねーかもハハハ」
「あ?無理。おいらも疲れてる」
「お前が疲れてるわけねーだろ!ずっと誰かしらに抱えられてたんだから。つーか突っかかってこないお前ってなんかキモー。おえ。」
クマは数時間前からずっと五条に抱えられている。
なんだかんだ言って、仲がいい兄弟にしか見えない。
「なんかさ…こんなに可愛い別世界にいると、私たちが呪術師だってこと忘れちゃうね…」
さっきから夏油と繋いでいる手に力が入る。
「忘れなよ、今だけでも。それとも、ずーっと忘れていたい?」
耳もとで囁くその言葉はとても柔らかい。
レイはフッと笑って夏油の耳もとに囁き返した。
「傑と一緒だったらずーっと忘れてたい。でも傑が元の世界に戻るんなら私も戻る。」
夏油は目を無くして笑った。
「くく…私についてきた先があの世だったらどうするんだ?」
「そんな世界でも傑がいるならおーけー」
「…天国じゃなくて、地獄でも?」
「うん!」
即答するレイに目を見開く。
「おいレイ見ろ!あそこにアラジンとジャスミンが!」
五条の突然の声にレイの視線が逸れる。
「えっ!どこ……あぁ〜ほんとだぁ〜」
「姫様系けっこー隠れてるらしーよ」
「え〜まじ〜?探そ!探そ!あ!アリエル〜!」
子供みたいにはしゃぐレイの手の甲にキスをする。
それにも全く気づいていないほど目を輝かせている彼女のことが、世界で1番美しいと思った。