第10章 dreaminess■
「あ〜なんかもうこれだけで楽しーよー。アトラクションとかなんにも乗らなくてもいいかもぉ〜」
あちこちの食べ物を購入しながらレイはクマと共に高鳴る鼓動を抑えきれない。
はしゃぎまくっているレイとクマを見失わないように気を配りながらも、夏油がスマホをしきりに確認している。
"今プーさんに並んでる!早く来い!"
五条からの急かしLINE。
「なぁ、プーさんってどこにある?」
「えーそんなの私が知るわけないじゃーん」
チュロスを齧りながら呑気にそう言う彼女を横目で見てから地図に視線を落とす。
「…地図だとあっちの方だけど…でも前に来た時は向こうだった気がしたんだよなぁ。…まぁいっかこっちからの方が近道…」
ぶつぶつ呟いている夏油の口元にチュロスが差し出された。
顔を上げると満面の笑みのレイがいて、フッと笑ってひと口齧る。
そうやって交互に食べながら、のんびり歩いていると、今度は電話が鳴った。
«おいお前らさぁどこいるわけ?!遅すぎなんだけど?!»
「…あー多分もうすぐ着くよ。で、それ何分待ちなの」
«あと15分くらい。早くしろよ!»
プツッー…
「ははっ、悟がキレてるよ」
「あっ、あれじゃない?」
そう言ってレイが指さしたのはまさにプーさんのアトラクションだった。
「待って、レイ」
歩を速めた瞬間、夏油に腕を掴まれる。
かと思えば身をかがめてペロリと唇を舐められた。
一瞬のことすぎて唖然としていると彼のいつもの優しい笑みが離れていく。
「…砂糖ついてたよ。」
「え…ありがと。てゆーか…傑も!」
そう言って今度はレイが背伸びをして夏油の口元を舐める。
「てめーら…いつまでイチャついてんだよ…」
レイの脇でポップコーンをバカスカ食べながらクマが呟いた。