第9章 swear
夏油の父親も、とっても優しい人だった。
あまり傑はお父さんには似ていないんだなと思った。
きっと顔はお母さん似なのだろう。
一緒に食卓を囲んでいても、夏油一家が皆いい人すぎて緊張感は自然と和らいでいた。
「…にしても傑…いつまでそんな不良みたいな髪型をしているんだ?少しはレイさんを見習って」
「お父さん、髪型の注意はもう私が昼間したよ」
「…そうか。そういえば五条くんは元気かー?」
「その話はもう私が聞きました。」
「私も聞いたよお父さん」
「なんだよ、少しは私にも喋らせてくれよっ」
レイは一家のやり取りに笑いがこらえきれなかった。
そしてお父さんの一人称も"私"なのだと気がつく。
傑の一人称や性格は父親譲りなのかもしれない。
「ところで、父さん、最近肩が痛いだろ。もしくは頭。」
突然そう切り出した夏油に、レイはドキリとなる。
夏油パパに会った時から気がついていたが、小さな呪霊がずっと取り憑いていて離れない。
夏油が何も言わず何もしないので、レイも黙っていたのだ。
「…あぁ、そうなんだよ。ただの疲れかなーと思ってたんだが、やっぱ何か憑いてるかー?」
苦笑い気味で肩をさする夏油パパを、
ママと妹は気味悪そうに顔を顰めている。
やはり皆には見えていないようだ。
すると横からクマがどこか楽しそうに声を発した。
「おう、憑いてる憑いてる!おいらが祓おうか?」
「じゃあ頼むよクマ助。」
夏油の声とほぼ同時にクマの目から閃光が放たれ、それは一気に祓われた。
クマの閃光ももちろん非術師には見えない。
夏油がこそこそとレイに耳打ちした。
「父さんは役員とかやってて結構呪霊が憑きやすい環境にいるんだ」
「そ、そうなんだ……」