第9章 swear
「呪霊は非術師から生まれる。無為な争いをすれば呪霊を増やすことになる。だから力を持った者が、時に耐え忍ばなくてはならないのさ。
でもさ…皮肉だよな……」
「…ん?」
ギュッと腕の力が強くなる。
鼓動の音が優しく耳に響く。
「時々私は考えるんだよ。非術師から生まれた呪いを、私たちが命懸けで祓って非術師を守る。
…このジレンマはいつ解決するんだろうとね…」
「・・・」
確かにそうだと思った。
非術師を助けているのにいつも非術師から攻められている…
簡潔に言えば自分たちがいるのはそんなふうな世界だ。
非術師のために命を張っているというのに、確かにこれは皮肉な状況。
そしてこれは非術師が、つまり普通の人類がいる限りは終わることは無い。
だけど・・・
「仕方がないよね。私たちが常に力をつけて少しでも多くの呪いを祓っていくしか…」
レイはそう言ったが、夏油は少しの間を置いてから呟いた。
「本当にそれが正しいのかな…」
「…え?」
「それだといつまでも…何も変わらないだろう。」
確かに根本的な解決には繋がっていないかもしれない。
原因の部分にも重きが置かれていないかもしれない。
「うん…でも…」
それ以外にどうすることもできないじゃないか…
そう思って口を開きかけた瞬間、夏油によって塞がれた。
開いていた口の隙間にすぐさま舌が入り込む。
「んん……ふ……っ…」
いつの間にか夏油が覆いかぶさっていて、暖かい舌が口内で絡まり合い、深く貪るようなキスを何度も交わしていた。
互いの息遣いが荒くなってきたところで部屋に近づく足音が聞こえる。
トントン
「2人とも〜いるよね〜?夕飯だって〜」
棗の声と、クマがボソボソ何かを言う声が聞こえた。
夏油が唇を離して適当に返事をし、レイの口元の唾液をペロリと舐めとった。
「…続きはまた後でね」
レイは火照る顔を隠すように布団から這い出た。