第9章 swear
「あれ?棗ちゃん、ここどうしたの?」
よく見ると、棗の肘にアザがついている。
蚯蚓脹れみたいにも見えた。
「あーこれねー、男子にやられたんだ〜」
「えぇ?!」
「ほら、私強いからさ。喧嘩になっても絶対に手を出すなってお兄ちゃんに言われてるの。」
レイは顔を歪めた。
しかし、棗は何食わぬ顔で話を続ける。
「私さ〜性格男っぽいからさぁ〜よく喧嘩になるんだよね。弱いものいじめしてたりすると、許せなくて」
「でも、手を出さないってなると、どうするの?」
「なんとか口喧嘩だけで頑張る!でも向こうから手を出してきたら、避けまくって、逃げて、終わり!
手出したらきっと殺しちゃうからさ〜」
ニッと白い歯を出す棗は、肘をわざと見せながらガッツポーズをした。
けれどレイは眉をひそめたままその痣を見る。
「とにかく私はお兄ちゃんとの約束は破りたくないの。」
「…そっか……」
何も言えなくなってしまった。
こういう傷を作ることはよくあるのかもしれない。
慣れてるよ!と言う棗は心にも傷を負ってはいないだろうかと心配になる。
「ねぇ棗ちゃん、よかったら明日さ、
一緒に買い物に行かない?」
「えっ!いいの?行く行く!!」
女同士の約束が完了したところで、ようやくクマの描いているものを覗き込む。
「ははっ、やっぱり。」
やはりそこには棗の顔が精巧に描かれていた。
棗は目を丸くして驚いている。
「すっごおおおー!ヤバすぎ!クマちゃん天才!!
ねぇ!夜にはお父さん帰ってくるからさ、お母さんとお父さんと私の絵を描いてよ!!」
クマは、え〜と面倒くさそうな声を出した。
「ねぇ!お願いクマちゃん!」
「クマ、またイチゴ味のお菓子買ってあげるから!」
「しゃーねーなー。」
棗は渡された絵を大事そうにファイルに入れていた。