第9章 swear
午後は棗に誘われて、棗の部屋で過ごすことになった。
傑は部屋で昼寝をしたいらしくて部屋にこもってしまった。
棗の部屋は、好きなバンドのポスターや、アニメのポスターが貼ってあったり、ファッション雑誌や漫画が律儀に本棚に並べられていたり、普通の中学生らしい部屋だ。
「ねぇねぇ、棗ちゃんって、好きな人とか彼氏とかはいるの?」
思い切ってどうしても聞いてみたかった質問をしてみた。
普通の中学生と話せる機会なんてないからというのもあるし、可愛いからきっとモテるだろうなぁと思ったというのもある。
すると棗は照れくさそうに笑った。
「好きな人は…いるけど…」
「そうなんだ!棗ちゃんは美人だから、猛烈アタックしちゃえばいいのに〜」
「ふふっ… レイちゃんはお兄ちゃんに猛烈アタックしたの?それともお兄ちゃんの方から猛烈アタックしたの?」
「えっ……」
ドキッと鼓動が大きく跳ねる。
なんとなくクマに視線を移すと、机の上でまた何かを書いているようでこちらを見ていない。
「私から…かな。わりと積極的だったかもしれないな。」
そう言って笑うと棗はいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「今までのお兄ちゃんはね、実は彼女はみんな非術師だったんだよ?知ってた?」
「あ、そうなんだ…知らなかったよ」
「でね、どの子にも呪術師ってこと隠してたから、うまくいかなかったっぽいよ。当たり前だよね〜」
その言葉にはなんとも言えなくなって口ごもった。
やっぱり理解や価値観の違い、他にもいろいろと問題があったのかもしれない。
「でも今回初めて同じ呪術師の彼女を連れてきてくれた。だから安心したよ。あんなお兄ちゃんだけど、よろしくねレイちゃん!」
「うん、もちろん」
なんて大人びた子だろう。
こんなしっかりしてるのに、まだ中1…
この子の恋が上手くいってくれたらいいな。
それに、傑のいうように、普通の幸せな人生を送ってほしい。