第9章 swear
「えーと、とりあえず…このセットを1箱お願いします。
…で…あと…クマは何がいいの?」
コソコソとクマに耳打ちをする。
「おいらこれぇ〜」
顎で指したそれはピンク色があしらわれた可愛らしいドーナツだ。
いちごミルクが好きなクマらしいチョイスに少し笑ってしまう。
店員はクマのぬいぐるみとコソコソ喋っている目の前の客に目を見開いている。
「ねぇ、それで、傑の妹さんは何がいいと思う?」
夏油には中学一年生の妹がいるらしい。
というのは今日初めて知ったのだ。
「さぁね…クマと一緒でいいんじゃない。
確かピンクが好きだったような気も…しなくもないし」
「・・・」
女の子は全員ピンクが好きとでも思っているんだろうか?
本当にどうでもよさそうな口ぶりに少々イラッとする。
とりあえずそれらを適当に選んで購入した。
「あ〜なんだか緊張してきたよぉ〜
ご両親とか妹さんに嫌われたらどうしよ〜」
「大丈夫だ。それはない。」
即答する夏油に疑問符が浮かぶ。
「なんでそう言いきれるの?」
「だってレイは愛想があるし、悟みたいな愛想の振り撒き方をする奴でも相当気に入ってるくらいなんだから」
悟は夏油一家に気に入られているのかぁ〜
きっと初めから馴れ馴れしくタメ口を使ってたんだろうなぁ。
そんな状況を想像すると、自然と緊張感が和らいだ。
とりあえず五条ほどにはしないが、きちんと明るく愛想よくしようと思った。