第9章 swear
夏休み初日。
まずはさっそく夏油の実家へ行くことになった。
もちろんクマも一緒に。
夏油の家族は皆、非術師らしい。
高専にもスカウトで入ったと言っていた。
「ねぇ、傑の家族は甘いものが好きかな?」
何かお土産を買っていきたくて、とりあえず途中駅の新宿に降りた。
久しぶりに新宿へ来たがかなりの人混みだ。
クマが迷子にならないように、夏油の荷物に押し込んだ結果、顔だけ出す形となっているクマがなんとも滑稽だ。
「んー、好きだったと思うよ、確か。
悟ほどじゃないと思うけど。」
「…確かって…自分の家族のことなのにわからないの?」
「あまり興味がないんだよ。それに、帰るのも久しぶりだ。」
「え、どのくらいぶり?」
「前回の夏休みぶり。」
その言葉に驚嘆した。
1年も会っていないということじゃないか。
これが、普通?なのか?
「はっ、随分と親不孝な奴だなロン毛野郎。」
「君に言われたくはないよクマ助。」
クマは夏油のバッグから顔だけ出してキョロキョロしている。
初めて来る新宿が新鮮なのだろう。
「おっ!あれが食いたい!なぁレイあれだ!」
クマの視線の先にはオシャレなドーナツ屋さんがあった。
看板を見て目を輝かせ始めた。
「あー、あれ最近話題のやつかぁ…
確か悟が食べたいって連呼してたやつだな…」
夏油が興味なさげにそう呟いた。
話題のやつ?…つまり流行りのお菓子!
ならばそれをお土産にしようと思い立ったレイはすぐに歩みを進めた。
「並んでない今のうちに早くっ!」
夏油はよろめきながら腕を引かれ、
ずんずん進んでいく彼女の後ろ姿につい顔が綻んだ。