第50章 promise ■
「自分たちがしてやれることは今まで何もなかったから、幸せになってほしいって言ってたよ。」
「え…」
「本当だよ」
ありえない…
と思ってしまった。
まさに言葉が出てこない。
彼が今喋っている内容に理解が追いつかない。
親なんて…
正直顔すらも忘れかけている。
存在だって忘れかけていた。
向こうだって絶対にそうだ。
現に娘を探そうともしていなかったじゃないか。
もうとっくに娘ではないけれど…
それに悟に言ったその言葉だってどうせ建前だ。
でもそれだってきっと悟はわかってるんだろうな…
「勝手なことしたかもだけど、これ一応僕のけじめだからさ。それに、レイを産んでくれて、出会わせてくれたことには感謝しなくちゃでしょ」
「……っ」
また言葉に詰まってしまい、複雑な感情を押し殺すように五条に抱きついた。
優しく包んでくれる彼に埋もれながら、目頭が熱くなる。
「悟…なんで…」
「え?」
「そこまでしなくていいのに…」
「させてよ。
そういうのずっと憧れてたんだよ」
五条はニヤニヤ笑って満更でも無い様子だ。
「ふ…それにしてもレイの両親は美男美女だね。レイみたいな子産まれんの納得したわ」
「……そのセリフいらない。それに、悟の両親のほうが美男美女なんじゃないの」
「ははっ、どーだろねぇ〜っ
でも近々会いに行くんだからそん時見てみてよ。」
「うん…わかった。」
どちらともなく唇が重なり、深いキスを交えていると、突然五条がパッと唇を離し、何かを思い出したように「あ!」と声を上げた。