第50章 promise ■
石造りのレンガ調の建物の前へ来た。
「ここは、"善き羊飼いの教会"ってゆーんだって」
「へぇ…なんだか絵本に出てきそう!」
絶景に佇む、とても趣のある素敵な教会だと思った。
すごく有名な教会らしい。
周りを見渡すようにふと上を見上げた時……
「え………っ…」
「よかったー…やっぱベストシーズンに来て正っ解。」
徐々に姿を現したその光景に目を見張る。
満天の星空の中に、霧のようなものが出始めた。
それは徐々にゆらゆらと動き、光線のように伸び、更にその光の帯は明るく輝き始め、幅が広がっていく。
形が変わっていったかと思えば、大きなかげろうのように変化し、瞬く間に薄いカーテンを広げたようなヒラヒラとした動き。
緑や薄紫色を、半透明に纏っている。
「え…え……な、に……これ……」
「オーロラだよ」
ゾクゾクっと一気に鳥肌がたった。
それほどまでに、そこに広がる光景は神秘的で妖艶で、
この世のものとは思えないような幻想的な輝きをこれでもかというほど放っていた。
そこにあるのはまさに、
夜空に踊る神秘の光だった。
「昔ね、1度ここに来たことがあった。
レイもクマも、いなかった頃。
そん時はコレ、見えなかったんだけどさ。
今日は見れてよかった。隣にはレイがいるし」
「・・・」
彼はたった1人で、この広すぎる夜空を
何を考えて見上げていたのだろう。
どんな…気持ちで……
自分だったらと考えると、いくら美しくても、そんな状況でこんな異世界のような空を眺めていたら
自分だけがこの世界に取り残されてしまったように寂しくて頭がおかしくなっていたかもしれない。
それとも逆に、自分という存在と、自分という存在の辛さや悲しみや怒りなんて、どれほどちっぽけでどれほど狭い世界しか見ていなかったのかと、その愚かさに嘲笑っていたかもしれない。
世界はこんなにも広いのに、
自分の考えていることや見てきたこと、自分の存在自体が、いかに小さくて小さくて儚いものなのかと。
そう考えたら、驚くほど孤独を感じると共に、不思議なくらいに開放的にもなった。
まるでこの世が、この空が、地球が、
逆に自分中心に廻っているような感覚さえした。